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東京高等裁判所 昭和56年(ラ)131号 決定

抗告人 野島弘光

相手方 東京証券取引所 外一名

主文

本件抗告を却下する。

理由

一  抗告の趣旨及び理由

本件抗告の趣旨は、原決定を取消し、更に相当の裁判を求める、というのであり、その理由は、本件提出命令を求める各文書は商法五四六条にいう結約書と同様の性格を有し、かつ、抗告人を含む一般投資家の利益のために作成された文書であるから民訴法三一二条三号前段該当文書であるのに、これを否定した原決定には同条号の解釈を誤つた違法がある、というのである。

二  当裁判所の判断

民訴法三一五条は「文書提出の申立に関する決定に対しては即時抗告をなすことを得」と規定するが、文書提出命令の申立を却下した決定に対しては本案事件の弁論終結にいたるまで即時抗告が許され、弁論終結後は許されないと解するのが相当である。すなわち、文書提出命令の申立は書証の取調申出の方法としてなされるものであつて、本案事件につき弁論が終結された後においては、文書提出命令に基づき文書が提出されても書証として提出する余地はないのであるから、文書提出命令の申立を却下した決定に対しては即時抗告をなす利益を欠き、許されないものといわなければならない。右却下決定の当否は本案判決に対する控訴審において改めて判断を受ける機会があり、また、それで足りるのであるから、文書提出命令申立人にはなんらの不利益はない。

これを本件についてみるに、記録添付の報告書(昭和五六年一一月一〇日付)によれば、原裁判所が、昭和五六年二月一八日第二四回口頭弁論期日において、抗告人のなした本件文書提出命令の申立(昭和五四年一〇月四日付)を却下し、即日、口頭弁論を終結し、同五六年四月二七日判決の言渡をなしたことが認められるから、右口頭弁論終結後である同年二月二三日になされた本件即時抗告は不適法であるといわねばならない。

よつて、本件抗告を却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 岡垣學 手代木進 上杉晴一郎)

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